tender dragon Ⅰ
ギュッと目を瞑って痛みに備えたけど、何故かいつまで経っても痛みは感じなかった。
不思議に思って目を開けるとそこには誰かが立っていて、振り上げられた手を掴んでいた。
「っ何よ。」
「楽しい?」
「は?」
「いや、楽しそうだなーって思って。」
何が起きたのか分からなくて、あたしはただ呆然としていた。
目の前にいる女の子は、話したことのないクラスメートで。名前を必死に思い出そうと頭を回転させた。
「鏡で顔見てみなよ。あんたら今スッゴいブサイクだよ。」
あぁ、思い出した。
村上結衣(ムラカミユイ)
美人な子だ。
何でもハッキリ言うから、みんな苦手だって言ってた。サバサバしてて、クラスで孤立してても気にしてない。
どこに行くにも1人だし、誰かと仲良くしてるところなんて見たことがなかった。
そんな子が、何であたしなんかを庇ってくれてるんだろう。
「はぁ?何あんた、この子の味方すんの?」
「少なくともあんたの味方ではないけど。」