tender dragon Ⅰ
「何で連れてきたの…?」
「え?」
来なきゃ、なんて思いながら、もう二度と来たくもない、とも思っていた。矛盾している。
来ると思い出してしまうから。
それが怖くて、何度も何度も躊躇した。
「何で…?」
「結衣が…」
希龍くんの口から、"結衣"の名前が出た。
名前で呼んでいるくらい親しい仲だったんだ。そんなことも知らないんだなぁ、あたし。
そっか、そうだった。
「あたしのせいで結衣は死んだんだもんね。」
知ってる。
そんなこと、あたしの口から言わなくたって希龍くんは知ってるでしょう。
だからここに連れてきたんでしょ?
思い出せ、って。
忘れんな、って。