tender dragon Ⅰ
ボロボロの日記
希龍くんに会わないのは、避けられてるからとかじゃない。あたしが、安田さんの家に行かないから。
親が遅い日も、安田さんの家には行かずに自分の家に帰ってきていた。
1人にならないように、春斗も一緒に。
「ごめんね、いつも。」
「いえ、家帰っても暇なんで。」
あたしが謝ると、春斗は決まってこう言った。
あたしが安田さんの家に行きたくないと言ったとき、春斗は何も聞かずに「分かりました。」とだけ言った。
「美波さん、俺明後日ちょっと用事があって迎えに行けないんですけど。希龍さんに…」
「希龍くんには言わないで。」
ダメだよ、希龍くんは。
あれから話をしてないどころか、会ってもいない。気まずくて顔を合わせられない。
「…すいません。それは出来ないっす。」
初めて、春斗が首を縦に振らなかった。