tender dragon Ⅰ
「あ……いや、そんな落ち込まなくても…」
春斗が慌てたように、あたしを励ます。
あたしそんなに分かりやすく落ち込んでたのかなぁ。
「大丈夫、気にしてないから。」
「……そうっすか。」
上手く笑えたかな。
これ以上春斗に気を遣わせるわけにはいかない。迷惑かけてばっかだもん。
「とりあえず、明後日は別のやつ迎えにやるんで。勝手に帰らないでくださいよ?」
「分かってるよ。」
そんなことしないよ。だって、何かあったとき迷惑がかかるのは龍泉の人たちでしょ?
ほんとは春斗に迎えに来てほしかったけど、用事があるなら仕方がない。
「じゃあ、俺そろそろ帰ります。ちゃんと戸締まりして寝てくださいね。」
「もー、子供じゃないんだから。」
「あはは、すいません(笑)」
「じゃあ。」と言って、ブサイクなうさぎのキーホルダーが付いたバイクの鍵を指でクルクルと回す。
まだ付けててくれてるんだなぁ、なんて思いながら、幼い笑顔を見せる春斗に手を振った。