tender dragon Ⅰ
「何だこの信じたくない状況。」
「ぷっ……あははっ!」
思わず吹き出してしまった。
信じたくない状況、か。まさにその通りだね。財布がなくなるなんてね。
「うわぁー、俺今最強についてない!誰か嘘だと言ってくれ!」
言ってあげたいのは山々なんだけど、タケくん、これは現実だよ。
君の財布はきっとどこかに落ちてるよ。
「いくらくらい入ってたの?」
「……5000円ぐらいですね。」
「5000円は探しに行くべきだね。」
あたしなら確実に探しに行ってるわ。
「ですよね。」
うんうん、と頷くくせに、探しに行こうとはしない。何でだろう。
「あー…でもなぁ、後で希龍さんに怒られるの嫌だしなー……でも5000円か…」
バイクを停めたまま、悩み始めた。