tender dragon Ⅰ

きっとあたしを1人にしたら希龍くんに怒られるからだろう。そんなことで希龍くんが怒るのか分かんないけど。

でももう家もすぐそこだし。この距離なら1人になったってきっと大丈夫。


「探しておいでよ。家もうすぐそこだし。」

「いや、ダメですよ!だって俺ちゃんと家まで送り届けるように言われましたもん!」


あたしはお姫様か!

そんなにか弱い女の子じゃないけど、大事にされてるのが分かるこの感覚は好きだった。


「分かった。じゃああたしここで待ってるから、探しておいでよ。」

「え…、でも…」

「うーん…あ、じゃあ10分で戻ってきて。」


あたしがそう言うと「絶対待っててくださいよ!」と言って走って財布を探しに行ってしまった。

5000円も入ってたら、交番に届ける心優しい人なんてあんまりいないもんね。

早い内に探しに行くのがいいよ。


でも、ふと思った。

ここで待ってる方が危険なんじゃないかって。現にあたしは今1人でいるんだし。

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