tender dragon Ⅰ
帰ろうかと思ったけど、そんなことしたらタケくんに申し訳ない。急にいなくなったら心配するはず。
「はー……」
息を吐き出すと、白くなって上へ昇っていく。
冬だ。
あたしの嫌いな、冬。1年の中で1番、あたしを不安にさせる季節だった。
暗くなるのも早いから、余計に嫌い。今だって少し暗い。怖いと思うのは初めてじゃなかった。
タケくんのバイクの音は近くでは聞こえないから、きっと10分では戻ってこない気がする。
「寒いなー…」
1人で外にいるには落ち着けない時間帯だった。
ふと、辺りを見渡してみる。
人気のない道だったから、誰もいないだろうと思って。
でも、違った。
人がいない方が怖いのかもしれないけど、今は違う。誰がいたって、自然と警戒しなきゃならない。
だから、少し見えた人影に、心臓が激しく波打った。
「っは……」
息を吐き出すのが苦しい。
周りなんて見なきゃよかった。