tender dragon Ⅰ

「俺らは知らないもんな。希龍の親父が総長辞めてから生まれたんだし。でもみんな言うんだ。"俺は大智さんにあこがれて龍泉に入ったんだ"って。」

なんか、すごい人なんだなぁ。

辞めても尚、こうやっていろんな人に憧れられてるなんて。

そんな人の息子が、希龍くんだなんて。


―ガチャ…


話していた最中、急に玄関のドアが開いた。

入ってきた男の人は、手も脚もスラッとしててモデルみたいな人だった。

…でも手には買い物袋を持ってる。


もしかして、安田さん?


「お客さん?」

自分の家に見知らぬ女が上がり込んでるのに、全く怒ってない。

大人っていうか、器が大きい人だ。


「可愛いから俺が拉致してきた。」

「!?げほっ……はぁ…っ」


希龍くんのその言葉に、飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになった。

何を言っているんだ。

さっきと言ってたことが全く違う。

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