tender dragon Ⅰ
ありがとう
「じゃあ俺ここで待ってるよ?」
「うん…」
ここに来たのは二度目だった。
希龍くんが運転するバイクに乗って、ここまで来た。色んなことを考えながら。
「美波」
「何…?」
「結衣、喜んでると思うよ。美波が来てくれて」
あたしの心を軽くする、魔法の言葉。
緊張していた体から、少し力が抜けた。
「うん、ありがと」
一度目は希龍くんと一緒に来たこの場所。あの日は花を供えることも、線香をあげることも出来なかった。
でも今は違う。
ちゃんと心の準備ができたよ。
空を見上げると、あたしを元気付けるような青空が広がっていて、手に持った綺麗な花が余計に映えた。
色とりどりの綺麗な花。
結衣によく似合うね。
【村上家之墓】
もう前みたいに逃げ出さないよ。
今まで来れなくてごめんね。
やっと、ここに来る決意ができたの。