tender dragon Ⅰ
「結衣…」
日記、あたしのこといっぱい書いててくれたでしょ?あれね、すっごい嬉しかったんだよ。
「ごめんね、遅くなって…」
結衣の命日は数日前に過ぎたはずなのに、結衣のお墓の前には綺麗な花が溢れるくらい置いてあった。
やっぱり、たくさんの人に愛されてたんだね。
「あたし、結衣に言わなきゃいけないこといっぱいあった。」
感謝を伝えなきゃ。
あたしが結衣にしてもらったことなんて、数えきれないくらいたくさんある。
でも、一度も"ありがとう"って言えなかった。
照れ臭かったのかな?
ほんとは生きてる内にたくさん言いたかったんだよ。
「誕生日、覚えててくれてありがとね。あの日祝ってくれようとしてたんでしょ?ピンキーリングもね、すっごい嬉しかったよ。」
あたしの小指には、キラリと光るピンキーリングがついてる。それを見るたびに結衣を思い出した。
悲しい思い出じゃない。笑顔の結衣を。
「…ずっと一緒にいてくれてありがとね。結衣といると不安なんてどこかに飛んでいっちゃって。結衣のおかげで毎日が楽しかったよ。」
受験勉強してるときも、一緒に帰ってるときも。結衣が隣にいるだけで自然と笑顔になれた。