tender dragon Ⅰ
「…あっそ。覚悟しとけよ。」
加奈たちは低い声でそう言って、あたしを睨み付けて教室を出て行った。
教室には冷たい空気が流れていて、あたしを見るクラスメートはいなかった。
見えてないフリ。
期待はしてなかった。
誰かが助けてくれる、なんて思ってたらいつまでたってもあたしは変われない。
あたしは結衣に勇気をもらった。大丈夫、1人でもやっていけるはず。こんな冷たいクラスでも大丈夫。
大丈夫だと言い聞かせれば、強くなれる気がした。強い人間になれた気がした。
だから芽衣にも弱音なんて吐かない。
「美波!バレたんだって!?」
「あはは、うん。でも大丈夫だよ、何もされてないし…」
「…ほんとに?ほんとに何もされてないの?」
「うん、大丈夫。」
心配そうにあたしを見る芽衣の表情が、今のあたしには救いだった。
まだあたしを心配してくれる友達がいる。
それだけで十分。