tender dragon Ⅰ
気をつけろ、って言われても、誰に気を付ければいいのか言ってくんなきゃ分かんない。
学校だって行かなきゃならないし、友達付き合いだってあるんだから絶対に外に出ることになる。
「美波、携帯貸して」
今まで黙っていた希龍くんが、こっちに歩み寄ってくる。
訳も分からず携帯を差し出すと、希龍くんは何かしている。慣れた手つきであたしの携帯と自分の携帯を操作していた。
「俺の連絡先、登録しといたから。何かあったらすぐに連絡してよ」
そう言う希龍くんの目は、真剣そのもので、頷く他なかった。それだけ大変なことに巻き込まれたんだと、改めて実感した。
「分かった…」
時期が悪かったのかな。
今、狂羅は勢力を伸ばしてきているから、必死なんだろう。とことん運が悪い…
電話帳の中に"神岡希龍"の名前がある。
これってかなりスゴいことだよね?
それと同時に、ものすごくまずい気がするんだけど……
女の子の憧れの龍泉の総長の連絡先があたしなんかの携帯に入ってるなんて、知られたら終わりだ。
ジ・エンドだ。