tender dragon Ⅰ
「最初から言ってたじゃない。」
「何すか?」
「希龍くんには彼女がたくさんいるって。」
「…そうでしたね」
初めて会ったとき、言ってたんだから。
"俺はダメだよ"って。
そんな人を好きになってしまったのはあたしなんだから、全部、自業自得。
希龍くんは何も悪くない。
「希龍さんは男の俺から見てもカッコいいですから、仕方ないですよ」
「…うん」
誰が見たって、魅力的な人なんだよ。
自然と人を惹き付けちゃうんだよね。
あたしもその中の1人。
特別なことなんて、何もない。
大勢いる中の、1人。
「寂しいときはいつでも呼んでください」
あたしより少し背の高い春斗が、あたしの前で優しく微笑む。
「俺、ずっと傍にいますから」
あたしを抱き締めた春斗は、やっぱりどこか大人っぽくて。希龍くんとは違う匂いに、涙が出た。