tender dragon Ⅰ
「「あのさ!」」
あたしが発した声はなぜか二重になってあたしの耳に届いた。
「え?」
慌てて葉太を見ると、葉太も驚いたようにあたしを見ている。
同じタイミングで言葉を発した。
「あ…葉太、先に言っていいよ」
何だか力が抜けてしまった。
葉太も、さっきのあたしと同じように色々考えてたんだろうか。
「……美波からでいい」
コトン、と机にリモコンを置くと葉太はあたしの方に向き直った。
ちゃんと話をしないといけないと、葉太もそんな風に考えてたんだろう。
「あの……」
いざ目の前にすると何て言えばいいのか分からなくなって、言葉が出てこない。
そんなとき、思い出したのは春斗の言葉。
"思ったことを言えばいいじゃないですか"
大人っぽい後輩が背中を押してくれてるんだ。
あたしが頑張らなきゃ意味がない。
「あたし、葉太とは今まで通り友達でいたい。」
久しぶりに、目を見た。
「今みたいに気まずいままは嫌なの。前みたいに普通に話したい。それじゃ、ダメ…?」
ダメって言われたらどうしよう。
もっと傷つけたらどうしよう。