tender dragon Ⅰ
そんな考えは、葉太の顔を見たら吹き飛んだ。
「うん、俺もそう言おうとしたんだ。」
目の前の葉太は、以前と同じように優しく笑っていて。あたしの頭をポンと撫でる。
「あんな風に気まずくなるくらいなら、このまま友達でいる方がマシだ。」
こんなことならもっと早くに話せばよかった。
葉太とまたこうやって話せることが嬉しくて、思わずあたしも笑ってしまった。
「よかった…」
「それ、俺のセリフだから。」
「あたしだって緊張したんだからー。ここに来るまでに何回深呼吸したと思ってんのっ」
「そんなに俺と仲直りしたかったわけか。」
「…もう!」
明日春斗にお礼を言おう。
春斗のお陰で、またこうやって葉太と話せるようになったよ、って。
「そういえば、今日春斗は?」
「あたしと葉太が仲直り出来るように気を遣ってくれたの。」
「へー、あの春斗が。」
「意外と鋭いからね。」
あたしが自慢気にそう言うと、葉太は思い出したように「そういえば希龍もそんなこと言ってたわ」と言った。
急に出てきた希龍くんの名前に心臓が跳ねる。
間違えた。
希龍くんの名前を聞いたからって、心臓が跳ねる理由なんてないのに。
間違って動いちゃったんだ。