tender dragon Ⅰ

「……なぁ、美波」

前を向いたまま

「別にフォローするわけじゃねぇけど…」

フォロー?

誰に対するフォローなの?


「希龍が女たらしだって、俺言ったよな?」

あぁ、また希龍くんの話。

頭ではそんなことを考えているくせに、間違って跳ねる心臓。あたしの心臓は、あたしの意思とは別に動いてるみたい。


「言ってたね…」

「あれ、言い方間違えた。」

言い方?何の言い方?

葉太の言ってる意味が分からなくて、横顔を見上げるけど、葉太はそのまま話を続ける。


「あいつは人より少し優しいだけ。ただ断りきれないだけの、優しいやつだよ。」

「どういう、意味…?」

断りきれない?

人より少し優しいだけ?

どういう意味なの?

それって………


「フォローはしないって言っただろ。俺が教えるのはここまで。あとは自分で考えろ」

そこから、葉太は何も教えてくれなかった。

諦めるはずの希龍くんのことが頭の中をグルグル回って離れない。

葉太のせいだよ…

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