tender dragon Ⅰ
そうと決まったわけじゃない。
だから、こんなに怖がる必要もない。
「こわい、なぁ…」
どうしてこんなに怖いんだろう。どうしてさっきから震えが止まらないんだろう。
「当たり前だよ。それが普通。」
安田さんが助手席のドアを開けてくれた。綺麗なその車に乗り込むと、慣れていない匂いが鼻をつく。
「怖くて当たり前なんだよ。美波ちゃんは、普通の女子高生なんだから。」
「はい…」
優しく声をかけてくれる安田さんの言葉に、曖昧な返事しか返せなかった。
それくらい、あたしの頭の中は不安で埋め尽くされていた。