tender dragon Ⅰ

「いつ意識が戻るかは分からない…」

葉太が苦しそうにそう言って、壁をガンッと殴る。静かな廊下に響いた。


希龍くんは黙って春斗を見つめている。

その表情にいつもののんびりした希龍くんの面影はない。あたしにだって分かる。

今、ものすごく怒ってるんだって。

血が出るんじゃないかってくらい、手を強く握りしめている。


「葉太、やっぱり潰そう。」

「あぁ、賛成だ。」

希龍くんの言葉に葉太は強く頷いた。


ドラマや映画でしか見たことのないような状況に戸惑っているのはあたしだけじゃない。

芽衣だってきっと怖くてたまらない。

静かに眠る春斗。

その顔には、生々しい傷がいくつもあった。

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