tender dragon Ⅰ
「春斗!」
静かな病院の廊下に響く、足音と少し高い声。
1人じゃない。何人かいて、その中にはきっと春斗の両親もいる。
「…蒼空、美波送ってやって」
「え…?」
希龍くんがあたしを見ずに言う。
春斗の意識が戻るまでそばにいたいのに。そんなことすらもあたしには許されないの?
「行こう、美波」
蒼空くんはあたしの手を引いて病院を出る。
何も言えなかったのは、春斗がこうなったのはあたしのせいだと自覚しているから。
「ごめんね…」
呟いた声は、春の暖かい空気に溶けた。