tender dragon Ⅰ
「みーなみっ」
花瓶を持ったまま立ち尽くしていると、廊下に響く高い声。
「芽衣っ!」
「遼太に連れてきてもらっちゃった」
「そっか。…遼太くんは?」
「外で待ってるって」
そう言うとあたしが持っていた花瓶を持って「洗いに行くんでしょ」と言って笑った。
「…うんっ」
「毎日来てるの?」
「うん」
「…無理しないでね。美波が倒れちゃったら意味ないんだから」
「大丈夫。無理なんてしてないから」
「…そっか」
芽衣は学校でもあたしのことを気にかけてくれてて、時間があれば会いに来てくれる。
急に有名人になっちゃったから、きっとあまり教室から出たくないはずなのに。
「あっ、花入れてもいいかな?」
「わっ、綺麗!」
綺麗にラッピングされた花。
春斗の病室には、いつでも花があった。
それは毎日、誰かがお見舞いに来てくれている証拠で。何だかあたしまで嬉しくなる。