tender dragon Ⅰ
「…ううん、大丈夫。行こ!」
芽衣の手にあった花瓶は再びあたしの手に。
色とりどりの花が、歩く度に揺れた。
「…行こっか!」
さっきまで困ったように笑ってた芽衣の笑顔が、いつもの可愛い笑顔に戻った。
困らせてばかりじゃいけない。
「綺麗だね、この花」
「でしょ!あたしが選んだのっ」
嬉しそうな芽衣が傍にいるだけで、あたしは元気になれるんだから。
「この花ね、春斗が早く元気になりますようにって、遼太と一緒に念力送っといたから!」
「あははっ、念力って何よっ」
「パワー的な?」
―ガラッ…
芽衣と一緒に春斗の病室に戻ると、座っていた希龍くんが振り返る。
あ……ダメだ。
慌てて目を反らした。
やっぱり、避けてしまう。
希龍くんは何も悪くないのに。