tender dragon Ⅰ
「見て!これ綺麗でしょー」
「はいはい。どうせ芽衣が選んだんだろ?」
「どうせって何よー!」
葉太が芽衣をからかって、それを見て希龍くんも笑っていた。この中で笑ってないのは、あたしだけ。
どうしてもよぎってしまう。
あの日、カフェにいた希龍くんと女の子。思い出したくなくても、ふとした瞬間に頭をよぎる。
忘れたいのに、忘れられない。
「美波も座ってっ」
芽衣はあたしの手を強引に引っ張って、希龍くんから遠い位置にある椅子に座らせた。
何もかも、お見通し?
「美波はあたしの隣!」
「芽衣ってば、彼氏みたいだよ?」
「独占欲強い彼氏だな。」
あたしたちを見て、葉太が笑う。
よかった、自然に笑えてる。
「あ、遼太からメール来てる」
チカチカ光る携帯。
そういえば、遼太くん外で待ってるって…