tender dragon Ⅰ
「おい、美波…」
葉太があたしの名前を呼ぶ。
唇を噛み締めて耐える。
今泣いちゃダメなんだ。
「希龍くんには、送ってもらいたくない…」
ハッキリ言ったはずなのに、その声は自分でも分かるくらいに震えていた。
勝手に嫉妬して、怒って。
希龍くんは何も悪くないのに。
でも……
それでも、一緒にいたくなかった。
「…俺のこと、嫌い?」
酷いことを言ったのに、希龍くんの声はいつもと変わらなくて。優しい声。
嫌いじゃないよ。
嫌いになれるわけない。
だけど……
「…嫌い、大嫌い…」
もう、好きでいるのはやめるから。
希龍くんも、あたしを嫌いになってください。