tender dragon Ⅰ
「…そっか…、じゃあ仕方ないね。葉太、美波を送ってあげて」
どうして、怒らないの。
助けてあげてる女が、酷いことを言ってるのに。希龍くんは怒って当然なのに。
顔を上げた。
希龍くんと目が合う。
「じゃあ、俺帰るね」
どうして…
「2人とも気を付けて」
どうしてそんなに悲しい顔をするの?
どうして、泣きそうなの?
大きなエンジンの音が、耳をつんざく。
遠ざかっていく希龍くんを見つめた。
「ったく、泣くならあんなこと言うなよ。」
葉太がぶっきらぼうに言う。
ポタポタと落ちる涙。
頬を伝って、何度も何度も地面に落ちた。