tender dragon Ⅰ
春休みにはいとこが家に来るから、安田さんの家に行く回数も減る。
嬉しいけど、ほんの少しだけ悲しい気もした。
「…最近つけられてんだ。」
「つけられてる…?」
「…多分狂羅。」
蒼空くんが発したその言葉。
"狂羅"
あたしが今、一番恐れなくちゃいけないもの。
「うそ……」
どうして…
「何で…?」
「多分、確かめてるんだよ……美波があのときの女か。」
体が震える。
何もしてないのに、息が乱れた。
「美波は知らないだろうけど、最近美波と似た格好をした子が知らない男に追いかけられたって。」
「え…?」
「その子だけじゃない、他にもいる。美波の特徴に当てはまってる子が何人も被害にあってる。」
春斗をあんな風にした人たちが、あたしのことを探してる。
それも、周りの人たちを巻き込んで。