tender dragon Ⅰ

春休みにはいとこが家に来るから、安田さんの家に行く回数も減る。

嬉しいけど、ほんの少しだけ悲しい気もした。


「…最近つけられてんだ。」

「つけられてる…?」

「…多分狂羅。」

蒼空くんが発したその言葉。

"狂羅"

あたしが今、一番恐れなくちゃいけないもの。


「うそ……」

どうして…

「何で…?」

「多分、確かめてるんだよ……美波があのときの女か。」

体が震える。

何もしてないのに、息が乱れた。


「美波は知らないだろうけど、最近美波と似た格好をした子が知らない男に追いかけられたって。」

「え…?」

「その子だけじゃない、他にもいる。美波の特徴に当てはまってる子が何人も被害にあってる。」

春斗をあんな風にした人たちが、あたしのことを探してる。

それも、周りの人たちを巻き込んで。

< 360 / 428 >

この作品をシェア

pagetop