tender dragon Ⅰ


校則に違反しない程度に染められたあたしの髪は、鏡に写す度に見慣れなくて違和感を感じた。

「今日で終わりだよ」

「染めた効果あったな。」


茶色く染められた蒼空くんの髪。

「校則違反じゃないの?」って聞こうとしたけど、蒼空くんはもう中学を卒業してた。

春休みが明けると東高の生徒になる。


「お昼過ぎてから終わると思うから、終わったらメールするね」

「おう。今日も春斗のとこ行く?」

「うん、行くよ」

「そ。じゃあな」

いつものように送ってもらって、蒼空くんの後ろ姿を見送る。


蒼空くんが髪を染めたのは3日も前で、もう慣れてもいいはずなのに慣れないのはきっと…

希龍くんに似てしまったから。

黒かった髪が茶色くなって、ますます大人っぽくなった蒼空くんを見てると、思い出すから。

蒼空くんは蒼空くんなのに。

…………ダメだ。

考えるな、あたし。

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