tender dragon Ⅰ
時計を見ると、すでに2時を過ぎている。
ぞろぞろと帰っていく生徒たちの顔は解放感に満ち溢れてる。
これから春休みだもんなぁ…
―ガラッ…
教室に戻ると、そこには写真を撮ってるクラスメートが何人か残っていた。
あたしを見て、少しの沈黙。
「…忘れ物?」
「え…?」
今まで話しかけてこなかったクラスメートが、笑顔であたしに話しかける。
何で…?
「最後だし…、あたしたち美波ちゃんのこと、嫌いじゃないから。」
「話しかけづらかっただけなの」
口々に言い出すクラスメートに、嘘をついてる子なんていなかった。
照れたように笑う子。
笑顔であたしを見る子。
何だ、避けられてたんじゃなかったんだ。
ただ、話しかけづらかっただけ。
「そっか…、ありがとね」
「あっ、美波ちゃんも一緒に写真撮ろうよ!」
駆け寄ってきた女の子が、嬉しそうにあたしの腕を引く。