tender dragon Ⅰ

誰だって言ってしまうに決まってる。

なのに加奈は、あんなに傷だらけになるまであたしを庇ってくれたんだ。

誰も責めたりしないよ。


「…遼太たち来たみたい、行こう美波。」

今度は芽衣があたしの手をとって走り出した。

複雑そうなその表情を見てれば分かる。

あたしを苛めてた加奈を、そんなに簡単に許すことは出来ないんだよね?


「芽衣!」

芽衣の名前を呼ぶ、遼太くんの声。

「何があったんだよっ?」

隣にいた蒼空くんも、険しい顔をしていた。

「美波のことが狂羅にバレたの!今も探してるって、早く帰らなきゃ…!」


今にも雨が振りだしそうな空。

いつもならまだ明るい時間帯なのに、今日だけは雲が太陽を隠してしまっていた。


「乗って、美波。」

手を強く引かれる。

蒼空くんは珍しく切羽詰まったような顔をしていて、事の重大さが身に染みた。


「遼太、別れて帰るぞ。…芽衣、眼鏡。」

蒼空くんが芽衣に向かって投げたのは、芽衣が前まで学校でつけてた眼鏡。


「下向いてろよ、芽衣。」

「うん…」

遼太くんの顔もいつになく真剣。

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