tender dragon Ⅰ
別れて帰るのはきっと、あたしといると芽衣と遼太くんまで危ない目に合うから。
「蒼空、気を付けろよ」
「…あぁ、分かってる」
遼太くんは芽衣を乗せて、あたしたちとは逆の方向に進んだ。
「…ごめん美波、逃げれる自信ねぇわ。」
珍しく弱気な蒼空くん。
その表情にいつもの自信はなかった。
「…うん、分かった…」
あたしだって、そんな自信ない。
だって寧ろ、捕まることを考えてしまってる。
「でも、あたしは蒼空くんについていくよ」
「…そ、じゃあ、精一杯守る。」
なんて言って笑って、自転車を進ませた。
ほら、似てるよ。
ピンチなのに、笑ってるんだもん。
どうしてなんだろう。
蒼空くんが何してたって、そこに希龍くんの面影を見つけ出してしまう。
そんなの、ダメなのに。
忘れなきゃならないのに。
頭ではそんなことを考えるのに、こういう状況になったとき一番に思い浮かぶのはやっぱり、希龍くんの顔だった。