tender dragon Ⅰ
本物の金龍
――――――
―――――――…
「はぁっ……っ…は」
「ごめん美波…!もう少し頑張って…!」
さっきから走って走って、精一杯逃げてるのに、バイクの賑やかな爆音は鳴り止まない。
それどころか、近づいてきてる気さえする。
「くそっ…何で…」
あたしを狙ってる。それはこの蒼空くんの様子を見ればすぐに分かった。
「蒼空くんっ…」
「美波、こっち…!」
蒼空くんはあたしを近くにある建物へ引っ張る。そこは誰も寄り付かない、ボロボロの図書館で。
隠れるにはちょうどいいけど、見つかったら終わりだ。こんなところ、誰も助けに来ない。
「美波っ、あの日希龍が女といたのは、別れ話をしてたからなんだ。」
図書館のドアについてる鍵を乱暴に壊しながらそう言った。
「え…?」
急に言われたから頭がついていかなくて、言われたことを理解するのに時間がかかった。
「葉太から聞いただろ?希龍に彼女がいっぱいいるのは、あいつが断りきれない性格だからだって。」
―ガシャン。
と音がなって鍵が外れると、そのドアを開けて中に入っていく。
確かにその話は葉太から聞いた。