tender dragon Ⅰ
でも、さっき蒼空くんが希龍くんのことを話してくれたのは、多分あたしがこうして悩むことが分かっていたからだよね。
あたしが希龍くんを頼れるように、あんな話をしたんだよね?
だったら、迷うことなんて何もない。
希龍くんが誰を好きでも構わない。
助けてって、素直に言うんだ。
携帯の画面には
【発信中】
の文字。
相手はもちろん希龍くんで、携帯を持つ手が震えた。
『…もしもし』
直接響く希龍くんの声は、あたしの耳にはっきり聞こえた。その声に安心して涙が溢れた。
『…美波…?』
「希龍、くん…っ」
『今どこにいる?』
あたしの声を聞いてただ事じゃないことを察したらしい。急に希龍くんの声色が変わった。
あんなに酷いことを言ったのに。
傷つけたのに。
やっぱり希龍くんはいつもと変わらず、優しい声であたしに話しかけてくれる。
「図書館、にいる……っ…」
涙が溢れて止まらない。
希龍くんの声が聞けた安心感と、蒼空くんのことと、1人でいる恐怖に。