tender dragon Ⅰ
『蒼空は一緒?』
「いないの…っ」
『何で?』
「狂羅が追いかけてきて…っ…蒼空くんが…あたしをおいて…っ……希龍くんが来るまでここにいろって言われたから…!」
自分でも何を言っているのか分からなかったけど、希龍くんは黙って聞いてくれた。
「希龍く…っ……あたし、怖い…っ」
ここに1人でいることが怖い。
今すぐにでも蒼空くんのところに行きたいのに、怖くてそれすらも出来ない。
『美波…』
優しい希龍くんの声が耳に届く。
「っ…希龍くん、助けて…!」
今すぐここに来て、抱き締めてほしい。大丈夫だよって言って、いつもみたいに笑ってほしい。
『美波、大丈夫だから』
落ち着かせるようにそう言うと、少しの沈黙のあと希龍くんは優しい声で
『俺が味方で、怖いものなんてある?』
なんて言った。
この人はすごい人なんだと、改めて思った。この状況でそんなことを言えるなんて。
涙はあっという間に引いてしまった。