tender dragon Ⅰ

『蒼空は一緒?』

「いないの…っ」

『何で?』

「狂羅が追いかけてきて…っ…蒼空くんが…あたしをおいて…っ……希龍くんが来るまでここにいろって言われたから…!」

自分でも何を言っているのか分からなかったけど、希龍くんは黙って聞いてくれた。


「希龍く…っ……あたし、怖い…っ」

ここに1人でいることが怖い。

今すぐにでも蒼空くんのところに行きたいのに、怖くてそれすらも出来ない。


『美波…』

優しい希龍くんの声が耳に届く。

「っ…希龍くん、助けて…!」

今すぐここに来て、抱き締めてほしい。大丈夫だよって言って、いつもみたいに笑ってほしい。


『美波、大丈夫だから』

落ち着かせるようにそう言うと、少しの沈黙のあと希龍くんは優しい声で


『俺が味方で、怖いものなんてある?』


なんて言った。

この人はすごい人なんだと、改めて思った。この状況でそんなことを言えるなんて。

涙はあっという間に引いてしまった。

< 380 / 428 >

この作品をシェア

pagetop