tender dragon Ⅰ
「……ううん、ないっ」
『だったら、そこで待ってて。俺が必ず迎えに行くから。』
1人でいるのは怖いけど、この人は必ずあたしを助けに来てくれる。
何故だか分からないけど、そんな気がした。
電話を切ってほしくないけど、そういうわけにもいかない。
今、そんな時間はないんだ。
「あ……希龍く…ん」
『何?』
理由なんてない。
ただ、電話を切りたくないだけ。…ちょっと、怖いからっていうのもあるんだけど。
「や……何でもない……じゃあね」
そう言って電話を切ろうとした。
『美波…』
でも、希龍くんが呼び止めるから。
「…何?」
少しだけ黙って、そのあと言った。
『美波が俺のこと嫌いでも、俺は美波のこと、嫌いにならないから。』
どうして。
どうしてあたしを嫌いにならないの?
酷いことを言ったじゃない。
嫌いって、大嫌いって…