tender dragon Ⅰ

「何で…?」

希龍くん、傷ついてたじゃない。

なのに、どうして?


『美波は俺にとって大切な子だから』

まだ、大切な子だって言ってくれるの?

ズキズキと痛む心。


あの日勝手に嫉妬して怒ってしまったのはあたし。希龍くんは何も悪くないのに、傷つけてしまった。


「嫌いじゃないよ…っ、ほんとは…っ、嫌いじゃない…!」

『え…?』

「ごめんね、嘘ついてたの……ほんとは、希龍くんのこと嫌いになったことなんて一度もない…!」


引いたはずの涙がまたポタポタと落ちる。

希龍くんが誰を好きでも構わない。

誰の名前を呼んでも構わない。

あたしを見てくれてなくても。

"ユカ"が誰かなんて、もう考えないから。


希龍くんをもう一度好きになってもいいかな?

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