tender dragon Ⅰ
何でか分からないけど、涙が出た。
希龍くんは、女の子が泣くとどうしていいか分からなくなる、って言ってたのに。
泣き止まなきゃ。希龍くんが困っちゃう。
止めたいのに、止まらない。
どうやらあたしの涙腺は、涙を自分の意思で止められないくらい緩いみたい。
「どうしたら泣き止んでくれる?」
困ったように笑って、あたしの頬に伝った涙を親指で拭う。
止まれ、止まれと思っても、自分の意思ではどうしても止められなくて、首を横に振る。
それだけで精一杯だった。
「…ごめん、約束破るけど…」
「え…?」
約束って何だろう。
そんなことを考えてる内に状況は一変した。
あたしの涙を拭った希龍くんの手が、あたしの両手首をギュッと掴む。
ゴツゴツした男の子の手。
再びコツン、とぶつかった額。
「泣き止んでよ、美波」
希龍くんのその言葉と同時くらい。