tender dragon Ⅰ
大好きな甘い匂いがあたしを包んで、あのときと同じ光景が目の前に広がった。
唇に暖かくて柔らかいものが触れる。
目を閉じた希龍くんの顔がぼやけるくらい近くにある。
あぁ、約束って…
"何もしないから"ってやつか。
だから約束破るけどって言ったんだ。
なんて考えてたら、手首を掴んでいたはずの希龍くんの手が頭に回ってて。もう片方は腰に回ってて。
髪をクシュクシュと撫でる。
「んっ……」
あたしの口から漏れる甘ったるい声。
食べられちゃいそう。
唇を何度も何度もくっつけられた。
唇を挟むようにキスをする希龍くんは、ほんとにあたしの唇を食べてしまいそうだった。
涙なんてもう、すっかり引いた。
行き場を失ったあたしの手は、すがるように希龍くんの服を握ってた。
背筋に電流が走ったみたいに、力が抜ける。
息が苦しくなってきたときだった。
あたしの下唇をチュッと吸って、希龍くんの唇は離れた。