tender dragon Ⅰ
消えた彼
朝からバタバタと響く足音。
ここは走っちゃいけない場所なのに、注意されるのもお構いなしにみんな走ってる。
『城戸さんの意識が戻りました。』
そう連絡が入ったのは、次の日の朝だった。
「春斗っ!」
見慣れたドアの向こう。
朝日の逆行に照らされて、顔はよく見えなかったけど……
「あ、美波さん」
嬉しそうな、聞き覚えのある声。
ベッドの上で笑顔を見せる彼は、間違いなく春斗だった。
「春斗っ、てめぇ心配させやがって!」
後ろにいた葉太がズカズカと病室に入っていって、春斗のベッドの横で止まった。
「ちょっ、やめてくださいよ葉太さん!」
春斗は怪我をしてるのに、葉太はお構いなしにじゃれあおうとする。
それを後ろから制したのは、希龍くんだった。
「久しぶり、春斗」
「希龍さん、お久しぶりです」
「もう、全部終わったから」
それを聞いた春斗は安堵の表情を浮かべた。
「春斗…」
ゆっくり近づくあたしを、春斗は笑顔で見つめてて。痛々しい傷が嫌でも目に入る。
「久しぶりですね」
「うん…、そうだね」