tender dragon Ⅰ
「そういえば、蒼空は来てないんすか?」
遼太くんがいることに気づいて、蒼空くんの姿を探す春斗。いないと分かると、希龍くんに言った。
「蒼空も春斗と同じで、歩けるほど元気じゃないから。多分今ごろ家で寝てるんじゃない?」
「まじっすか?」
「中学生が無理してっから。あいつも希龍に似て怖いもの知らずっつーか、ほんとにこいつの弟だわ。」
希龍くんを指差す葉太は心底呆れたような顔で。指差されてる張本人は能天気に欠伸なんかしてる。
「あ、美波さんは怪我ないんですよね?」
突然出たあたしの名前に驚いた。
「えっ、あたし?」
春斗の目があたしに向いていて、優しい笑顔があたしに向けられてることに気がついた。
「遼太、ジュース買いに行こ」
「え?何で…」
「いいから!葉太も希龍も行くの!」
芽衣は気を遣ってか、不思議そうな顔をしてる遼太くんと葉太と、眠そうな希龍くんの手を引いて病室を出ていった。
さっきまで賑やかだった病室はシーンと静まり返って、あっという間にあたしと春斗の2人だけになった。