tender dragon Ⅰ
運ばれたときの状況をあたしは知らないけど、葉太が言ってた。
"見てらんねぇくらいボロボロだった"
そう言った葉太の顔に余裕はなかったし、ICUに入るくらいヤバイ状況だったんだから。
「…毎日来てくれてありがとうございました」
「あたしが好きで来てたんだから、お礼なんて言わなくていいよ」
申し訳なさそうにお礼を言う春斗を見てると、何だかこっちまで申し訳なくなってきた。
―ガラッ…
「ジュース買ってきたよ!」
いきなり開いた扉の向こうには、ジュースをたくさん持った遼太くんと芽衣がいる。
少し遅れて葉太と希龍くんも入ってきた。
「春斗どれがいい?」
「うわっ、買いすぎだって!」
人数分よりも明らかに多い缶ジュースが、布団の上に置かれる。
隣にいる遼太くんは「俺が全部買ったの!」と騒いでいて物凄く賑やか。
「美波はどれがいい?」
「美波さんはミルクティーですよね?」
「うんっ」
春斗が差し出したミルクティーを受け取った。
何もかも上手くいく。そう思っていたけど、そんな考えは甘かったみたいで。
これから起こることなんて、予想もしていなかった。