tender dragon Ⅰ

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「やっと退院だね」

春休みが終わりに近づいた頃、やっと春斗が退院できることになった。

「俺持ちますよ」

「いいの、持てないでしょ?」


右腕の骨はまだ完全に治ったわけじゃない。右足だって、松葉杖をつかなきゃ歩けない。

まだまだ傷は残ったままだった。


「…すいません」

「いいんだってば、気にしないで。」

申し訳なさそうにあたしを見て謝る。

あたしが持ってる荷物は春斗の物だけど、持てないほど重いわけじゃない。

だからいいのに。


「みんなが待ってるから、行こう」

葉太が春斗の退院祝いをしようと言いだして、みんなは今安田さんの家で準備中。

迎えに来るのがあたしの役目になって、安田さんが車で迎えに来てくれてるらしい。


「どこに行くんですか?」

「安田さんの家だよ」

「そうっすか」

慣れない松葉杖をつくのはやっぱり疲れるみたいで、いつもよりペースが遅い。

でも、それに合わせて歩くのも悪くない。

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