tender dragon Ⅰ

「ちょうど準備出来たってさ」

春斗の荷物を持った安田さんが、携帯を眺めながら言う。


「何の準備ですか?」

「ふふっ、内緒!」

当の本人は何が何だか分からないような顔をしていて、あたしと安田さんを交互に見つめる。

エレベーターの中、光る階数の数字は徐々に上がっていった。


「えー、何すかっ、気になるんですけど!」

「楽しみにしてろって」

大人っぽく笑った安田さんが春斗の頭を撫でる。やっぱり誰といたって春斗は弟だ。

きっとみんなそう思ってる。

可愛いみんなの弟。


エレベーターが安田さんの家の階について、安田さんと2人で春斗のペースに合わせて歩いた。

「ゆっくりでいいから。」

急ごうと焦る春斗が可愛くて、どうしても子供扱いしてしまう。

すると春斗はムッとして「子供扱いしないでください」と言った。


「バーカ、拗ねんなよ」

そんな春斗を安田さんは笑って、からかうように頭をガシガシと撫でる。

「拗ねてませんって!」

明らかにからかう態度で、春斗はどうしてもそれが嫌みたい。もっと拗ねた。

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