tender dragon Ⅰ
「お前が希龍や葉太のことを尊敬してんのと同じような感覚だって。」
少し前を歩いていた安田さんがドアノブに手をかけた。
そのときだった。
―ガチャッ!
勢いよく開いた扉は安田さんの顔に思い切り直撃して、しゃがみこんだ安田さんの横を通りすぎる人影。
驚いたあたしと春斗が見たのは、焦った希龍くんの顔だった。
「え…希龍くん!?」
慌てて希龍くんの名前を呼ぶと、振り返ってあたしと春斗を見た。
その表情にいつもの余裕はない。
携帯を握る手は、力を入れすぎて震えていた。
「…っごめん」
「ちょっ…希龍さん!」
春斗もいつもと違う希龍くんを見て動揺してて、慌てたように名前を呼ぶ。
それでも希龍くんは止まることなく、走って行ってしまった。
「いってー…」
「安田さん大丈夫っすか?」
「あぁ、大丈夫だけど…希龍があんなに余裕ねぇの初めて見た。」
そんなことを言いながらも、安田さんは再びドアノブに手をかける。
―ガチャ…
ドアを開けるとそこには呆然と立ち尽くす葉太がいて、その後ろには芽衣や遼太くんや蒼空くんまでいる。