tender dragon Ⅰ
何も言わずにミルクティーを飲むと、安田さんは「美波ちゃんの方が可愛いけどね」なんて言ってたから無視した。
安田さんらしくない。
「…まぁとりあえず、2人なら大丈夫だってことだよ。」
「そうみたいですね」
あたしが心配するほど、あの2人は弱くない。あたしは人の心配をしている場合じゃないんだった。
「希龍は大智さんの息子だし。」
そう言った安田さんの顔は、何か楽しいことを話している子供のようだった。
落ち着いてて、大人な安田さんが"大智さん"の話をするときはこんな表情をするんだ。
「大智さんって、希龍くんのお父さんですか?」
「うん。龍泉の歴代総長なんだ」
そういえば、聞いたことがあった。希龍くんのお父さんは10代目の龍泉の総長だった。
たしかお祖父さんは、組長だったよね?
「やっぱり、凄い人なんですね」
あたしが聞く限りでは、龍泉の歴代総長の中では断トツで人気がある。
みんな尊敬してるみたいだし、知らない人なんていないみたい。