tender dragon Ⅰ
「そりゃあ、もう。みんな大智さんに憧れて龍泉に入ったくらいだからさ。」
「そんなに…」
「大智さんが総長辞めてからも、大智さんを越えられる総長なんていなかったよ。」
カリスマ性、と言うのだろうか。
そこまで人を惹き付けるだけのものを持っているんだ。これだけ尊敬されてるんだから、間違いない。
「ほんとに、凄い人だよ。20年前、狂羅を潰したのは大智さん達の代だし。」
そういえば、希龍くんも言ってたなぁ。
お父さんの代で潰した狂羅が、息子の希龍組長の代で復活するなんて、何だかタイミングが良すぎるような…
「あの時代が、龍泉の黄金期だよ」
あたしは何も聞いていないのに、安田さんは嬉しそうに"大智さん"のことを話してくれる。
「黄金期?」
「この辺で、龍泉がトップだった時期。」
龍泉がトップだった時期?
そんな時期があったの?
そもそも、今この辺でトップなのは、どこの暴走族なんだろう。今の言い方だと、きっと龍泉ではない。