tender dragon Ⅰ

「何で緊張してんの?」

蒼空くんが部屋を出ていって、希龍くんがそう聞いてきた。

理由?理由……


「や…何でだろ…」

「何だそれ(笑)」

葉太が笑ってあたしの頭をポン、と撫でる。


「腹へった。安田昼飯まだー?」

「まだ!」


葉太が台所に向かって叫ぶと、台所で安田さんが叫んだ。すると、葉太は台所の方へ行って、安田さんと話し始めた。


あたしと希龍くんは2人きりになる。

葉太があたしの頭を撫でたときも、台所に行ったときも、希龍くんはあたしから目を逸らさなかった。

それが分かっているから、希龍くんの方を見れない。
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