ゆびきり
「ここ、いったいどこなんだろう?」
 あたしは、ドレスのまま走っていた。
 どこを見渡しても、見たことのない景色だった。
「そういえば、携帯…」
 ドレス姿のあたしが携帯を持っているわけがなく…
 コンビニの前にある公衆電話があるけど、お金がなく電話できない…
 でも、早くしないと、追いかけられちゃう…
 急がないと…
 
 何分走ったんだろう?
 学校の近くに来たようだ…
 でも、あたしが知っている場所でも、方向音痴のあたしは、ちゃんとした場所にたどり着けるか…
 いま、家に行っても親がいるし…
 隣の陸斗の家に行っても、あたしのこと探してるだろうし…
「…らー!…いら!」
 どこからか、あたしのことを呼ぶ声が聞こえた。
 でも、下手に返事をすると、氷室先輩のところに連れてかれるかもしれないし…
 でも、その声はどんどん近くになってきた…
「愛羅!どこ行ったの?はやく、出てきて!亮君が待ってるわよ…」
 明らかにお母さんの声だ…
 出ていくわけにはいかない…
 隠れなきゃ!
 あたりを見渡し、近くにあった公園に身を隠した…
 
 5分くらいたっただろうか…
 お母さんの声は聞こえなくなった。
 でも、また違う声、でも心地いい声が聞こえてきた…
「愛羅!どこに行った!早く氷室から逃げよう…いるんだろ…なぁ…」
 陸斗の声だった。
 でも、どこにいるかはわからない…
 それでも、あたしは走り出した…
 
 陸斗は、覚えてるのかな?
 小さい頃に約束したよね?
「大きくなったら、結婚する」って。
 叶えよう!
 二人で、幸せな家庭を築こう!
 大丈夫、陸斗がいる…
 かわいい男の子と、女の子、2人生んで毎日幸せに暮らすの…
 最後の時まで、一緒だよ…
 絶対にはなれない…
 待ってて、今行くから…

< 90 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop