大切な人
人間界 ~春香の部屋~ ハルside
少女の名前は桜木春香(サクラギハルカ)。
高2で母親と二人暮らし。母親はいつも帰りが遅く、彼女はいつも一人で食事を食べているそうだ。
魔王様からは、ここまでの情報をいただいた。あとは、自分で集めなければならない。
…しばらく、彼女のことを観察していたら、彼女がこっちを向いた。
…目が合った?
いや…そんなわけがない。彼女には僕達の姿は見えないはず。
「…!あなた、誰!?」
あなた?僕のことを言っているのだろうか。
いや、その前にどうして彼女は僕のことが見えているのだろうか。変な人間だ。
今まで、何千、いや何十万人と連れて行った僕だが、僕の姿が見えたのは老人や「お坊さん」と呼ばれる人間だけだった。
なのに、どうして彼女は見えるんだろう。
僕は少しとまどってしまった。
「…あ、死神。」
「死神?死神がどうしてここにいるの?」
なんなんだ、この人間は。物わかりがいいのか悪いのかわからない。
「…死神ってどんな生き物か、わかる?」
「…たぶん。」
「…じゃあ、その理由じゃないかな。」
僕の言葉を聞いたとたん、彼女は何かを悟ったように下を向いた。
「そっか。私、死んじゃうんだね。だから、あなたが来た。そうでしょ?」
物わかりはいいようだ。
僕達は、いつでも人間を連れて行くことができる。だから、彼女たちの寿命は僕たちが握っていると言ってもいい。
今回の仕事は、早く終わらせることができるかもしれない。
こんな仕事早くおわしたい。
早く…ね。
「すぐに、…死んじゃうの?」
「…いや。」
そう言ったとたんに彼女の目から涙があふれた。流れ星のような涙が。
そして彼女は笑顔でこう言った。
「そっか。…よかった。」
よかった?どうして?
時が来たら、あの世界へ連れて行かれるのに。
…老人は悲しみ、行きたくないと泣きながら孫を抱いていた。
「お坊さん」は僕を追い払おうとお経を読み始める。
そんなことしたって、無駄なのに。
今までの人間は連れて行かれるとわかったとたんに行きたくないと泣いているばかりだった。
「お前さえいなければ」ってナイフを持って、襲いかかってきた奴もいた。
なのに…よかった?
この少女は…何を考えているのだろうか。
まだ時間があるということだけで、うれし涙を流すなんて。
「…悲しくないの?」
衝動的に、聞いてしまった。
「悲しいけど、どうにもならないから。」
笑顔でそぅいった彼女だけど…叫んでいる気がした。
いやだって。表には出さずに心の中で。
強がっているんじゃない。ただ、あきらめているんだ。どぅにもならないって。
確かに、僕だって無理に運命を変えようとは思わない。
運命に従い、人間を連れていくだけ。
逆らったって何も変わらないから。
高校生でここまで物わかりがいいと、今までの人間は何だったのかという気がしてくる。
「そぅいえば…いつまでここにるの?」
ふと彼女が顔をあげて、そぅ僕に聞いた。
いつまでって言われても、彼女を連れて行くまで観察することになっているし…。
「…君を連れて行くまで。」
「本当?じゃあ、夕飯食べよ?」
僕達は、食事をしなくてもいいのだけれど、彼女の気持ちを考えるとうなずくしかなかった。
「できたよ。食べよう?」
「…。」
「私、いつも一人で食べてたの。だから、うれしいな。」
人が傍にいるだけで、うれしいものなのか。不思議な生き物だ。
「名前…聞いてもいい?」
「…ハル。」
「本当?すごい!私、春香。似てるね!私、みんなから「はる」って呼ばれてるの。ハルも、
「はる」って呼んで?」
名前なんて、きいてどぅするんだろう。
どうせ、すぐに別れることになるのに。
それに、自分を連れて行こうとする死神と食事をしたり、名前で呼び合ったり、バカなのか?死ぬということを、忘れた?
…いや、高校生で、それはないだろう。
でもなぜか…こいつと話しているだけで、胸のあたりが温かくなってきた。
…どうしてだろう。
「ほら、呼んでみて?」
「…はる。」
「うん。これからも、はるって呼んでね?」
「…。」
どうしてこいつ…はるはこうなんだろう。
仲良くしようとしているのか?だとしたら、本当にバカだ。
ユナよりも、バカかもしれない。
この人間…はるはよくわからない。
「死神って魔法とか使えるの?」
「…例えば?」
「ん~。時間を止めたり?」
「…できる。」
「すごいなぁ~!さすが死神だね。」
さすがの意味がよくわからない。
…はるといると、調子が狂う。
なぜか、胸が温かくなったりする。
僕は人間じゃないのに…変だ。
僕が変なのか、はるが変なのかわからないけれど…。
でも、はるは今までの人間とは、違う…そう感じた。
「ごちそうさま。今日はありがとう。うれしかった。…ねぇハル?ハルは、私のことずっと見てるんでしょ?じゃあ…、呼んだら来てくれる…?」
「…うん。」
なぜだろう…。なぜか、了解してしまった。僕らしくもない。病気でもかかったのか…?いや、ありえない。
「じゃあ、おやすみ」
…こうして、はるの観察一日目が終了した。
高2で母親と二人暮らし。母親はいつも帰りが遅く、彼女はいつも一人で食事を食べているそうだ。
魔王様からは、ここまでの情報をいただいた。あとは、自分で集めなければならない。
…しばらく、彼女のことを観察していたら、彼女がこっちを向いた。
…目が合った?
いや…そんなわけがない。彼女には僕達の姿は見えないはず。
「…!あなた、誰!?」
あなた?僕のことを言っているのだろうか。
いや、その前にどうして彼女は僕のことが見えているのだろうか。変な人間だ。
今まで、何千、いや何十万人と連れて行った僕だが、僕の姿が見えたのは老人や「お坊さん」と呼ばれる人間だけだった。
なのに、どうして彼女は見えるんだろう。
僕は少しとまどってしまった。
「…あ、死神。」
「死神?死神がどうしてここにいるの?」
なんなんだ、この人間は。物わかりがいいのか悪いのかわからない。
「…死神ってどんな生き物か、わかる?」
「…たぶん。」
「…じゃあ、その理由じゃないかな。」
僕の言葉を聞いたとたん、彼女は何かを悟ったように下を向いた。
「そっか。私、死んじゃうんだね。だから、あなたが来た。そうでしょ?」
物わかりはいいようだ。
僕達は、いつでも人間を連れて行くことができる。だから、彼女たちの寿命は僕たちが握っていると言ってもいい。
今回の仕事は、早く終わらせることができるかもしれない。
こんな仕事早くおわしたい。
早く…ね。
「すぐに、…死んじゃうの?」
「…いや。」
そう言ったとたんに彼女の目から涙があふれた。流れ星のような涙が。
そして彼女は笑顔でこう言った。
「そっか。…よかった。」
よかった?どうして?
時が来たら、あの世界へ連れて行かれるのに。
…老人は悲しみ、行きたくないと泣きながら孫を抱いていた。
「お坊さん」は僕を追い払おうとお経を読み始める。
そんなことしたって、無駄なのに。
今までの人間は連れて行かれるとわかったとたんに行きたくないと泣いているばかりだった。
「お前さえいなければ」ってナイフを持って、襲いかかってきた奴もいた。
なのに…よかった?
この少女は…何を考えているのだろうか。
まだ時間があるということだけで、うれし涙を流すなんて。
「…悲しくないの?」
衝動的に、聞いてしまった。
「悲しいけど、どうにもならないから。」
笑顔でそぅいった彼女だけど…叫んでいる気がした。
いやだって。表には出さずに心の中で。
強がっているんじゃない。ただ、あきらめているんだ。どぅにもならないって。
確かに、僕だって無理に運命を変えようとは思わない。
運命に従い、人間を連れていくだけ。
逆らったって何も変わらないから。
高校生でここまで物わかりがいいと、今までの人間は何だったのかという気がしてくる。
「そぅいえば…いつまでここにるの?」
ふと彼女が顔をあげて、そぅ僕に聞いた。
いつまでって言われても、彼女を連れて行くまで観察することになっているし…。
「…君を連れて行くまで。」
「本当?じゃあ、夕飯食べよ?」
僕達は、食事をしなくてもいいのだけれど、彼女の気持ちを考えるとうなずくしかなかった。
「できたよ。食べよう?」
「…。」
「私、いつも一人で食べてたの。だから、うれしいな。」
人が傍にいるだけで、うれしいものなのか。不思議な生き物だ。
「名前…聞いてもいい?」
「…ハル。」
「本当?すごい!私、春香。似てるね!私、みんなから「はる」って呼ばれてるの。ハルも、
「はる」って呼んで?」
名前なんて、きいてどぅするんだろう。
どうせ、すぐに別れることになるのに。
それに、自分を連れて行こうとする死神と食事をしたり、名前で呼び合ったり、バカなのか?死ぬということを、忘れた?
…いや、高校生で、それはないだろう。
でもなぜか…こいつと話しているだけで、胸のあたりが温かくなってきた。
…どうしてだろう。
「ほら、呼んでみて?」
「…はる。」
「うん。これからも、はるって呼んでね?」
「…。」
どうしてこいつ…はるはこうなんだろう。
仲良くしようとしているのか?だとしたら、本当にバカだ。
ユナよりも、バカかもしれない。
この人間…はるはよくわからない。
「死神って魔法とか使えるの?」
「…例えば?」
「ん~。時間を止めたり?」
「…できる。」
「すごいなぁ~!さすが死神だね。」
さすがの意味がよくわからない。
…はるといると、調子が狂う。
なぜか、胸が温かくなったりする。
僕は人間じゃないのに…変だ。
僕が変なのか、はるが変なのかわからないけれど…。
でも、はるは今までの人間とは、違う…そう感じた。
「ごちそうさま。今日はありがとう。うれしかった。…ねぇハル?ハルは、私のことずっと見てるんでしょ?じゃあ…、呼んだら来てくれる…?」
「…うん。」
なぜだろう…。なぜか、了解してしまった。僕らしくもない。病気でもかかったのか…?いや、ありえない。
「じゃあ、おやすみ」
…こうして、はるの観察一日目が終了した。