【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
あー!
もしかして、あたしのすごっい勘違いで。
この男の子……遊び人なんじゃない?
口から血を流してたのも、そういうプレイなのかもしれない。
あたしだって知ってる。
SMとかいうやつなんだ。
確かに顔も良いし、モテないわけないよね。
うん……この男の子にはかかわっちゃ駄目だ。
真っ直ぐに見つめた椎名君と目が合った。
あたしに気付いた椎名君は顔色を変えるわけでもなく、微笑むわけでもなく、冷たい瞳であたしを見てそっと目を逸らした。
……気付いてない?
昨日のが、あたしだって気付いてないよね?
よかったかも。
これなら、近付く事もないし。
殺される事もない!
と、喜んだのもつかの間。
「じゃあ席は……あ、有賀の隣な」
「はっ?」
担任の言葉に驚いて変な声が出た。
一斉にあたしの方を振り返った女子から
「仁奈ずるーい」
と声が聞こえる。
ちょっ、ちょっと待ってよー。
全然ずるくなんかないし。
――カタン
小さな音を立てて、隣に座った椎名君。
「あ。よ、よろしくね?」
にっこり、少し引き攣った笑顔で言うと、チラッとあたしに視線を飛ばし……
そのまま無言で席についてしまった。
……なんか、すっごーーーく感じ悪いんですけどっ。
こんなのがモテるの?
モテるわけがないよっ!