【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
その中でも女子の声援は一人の名前ばっかり。
「椎名くーん!」
転校して来て以来、無愛想な態度しか見せていないアイツは何故かモテている。
確かに顔は良いとは思う、顔はね。
背も高いし、細そうに見えて筋肉だって結構あるし。
一般的に見ればイケメン、そうは思うけど。
吸血鬼だよ?
「しかしモテるねぇ」
そう呟くように言った京香に「なんかねぇ」と、あたしも呟いた。
「ん? どうした、仁奈?」
「え? なにが?」
「何か言いたそうな顔してるから」
首を傾げる京香を見た後、あたしは椎名冬夜を見て叫ぶ女の子達の方へと視線をむけた。
「んー。椎名冬夜って態度悪いじゃん。
それなのに好きって……結局、顔しか見てないってことじゃない?」
「んー、まぁね」
「椎名冬夜のこと何も知らないのに好きとかさー。
どうなんだろーって思って」
「仁奈は知ってるの?」
「え?」
「椎名君のこと、他の女の子より知ってるの?」
そう聞かれてドキンッとした。
吸血鬼
これは、いくら京香だとはいえ言っちゃいけない気がして。