【完】愛の血−超勝手な吸血鬼
「お前、今の俺の状況わかってる?」
「……なんとなく」
今の椎名冬夜は血が足りてない。
すぐにでも血が欲しいはず。
その場しのぎなら、誰の血でもかまわない。
そういう感じなんだろうけど……
目の前に居るのは、あたし。
椎名冬夜が生きていく為に必要な血の持ち主らしい あたし なんだ。
「そんな事だろうとは思ったけど」
急に優しくなった声に、あたしは顔をあげた。
ここに来てから見ている姿と何の変わりもない体勢。
屋上のドアの横に積まれた荷物にダルそうに、もたれ掛かったまま。
「今の俺には昨日みたいな元気ないからなー。
無理矢理襲うことも出来ねぇよ」
あ……。
だから、あたしに“近付くな”って言わないの?